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2015年5月28日木曜日

アイドルヘリウム事故で、日本小児科学会から報告書が出される

 こんにちは、稲田商会です。

 これ、恐いですね。

アイドルのヘリウム事故、痙攣して卒倒するほどの重症だった BS朝日番組、日本小児科学会が「BPOでの審査が必要」(JCASTニュース)
2015/5/26 19:48
   BS朝日のバラエティ番組で起きたヘリウムガス吸引事故について、テレ朝側は、アイドルグループの少女(12)が吸引後に意識を失ったと説明していた。しかし、実際は、痙攣して卒倒するほどの重症だったことが、日本小児科学会の経過報告で分かった。 
(後略) 
出典:JCASTニュース



 恐いなと思ったのは、次のところです。

引用、ここから。
(前略) 
  吸うと声が変わるというヘリウムガス缶をネタに、少女を含めた出演者5人がゲームを始めた。1本のみガス缶、残りの4本は空の缶という設定で、5人がそれぞれ缶を取って吸い始めた。しかし、1回目は、だれの声が変わったか分からず、やり直しになった。そして、2回目になって、少女は、ガス缶を右手で持って左手で鼻をつまみ、司会者の合図で吸引した。
   ところが、「4秒ほどして缶を口から離した直後から右手を震わせ始め,約 5 秒後に後方へ卒倒した」というのだ。少女は、受け身を取れなかったため後頭部を強打し、全身が硬直して激しい痙攣を起こした。 
(後略) 
出典:JCASTニュース
引用、ここまで。

 4秒吸い込んだ直後から症状が現れて、その5秒後には(後頭部を打つほどの勢いで)後方に卒倒したってのは、とても恐いですね。
 子供が同様のことをしたとして途中で止められる時間はほとんど無く一瞬で倒れてしまうということですね。

 もう少し詳しく知ろうと思い、日本小児科学会の該当ページを探しました。

参照:No.53 ヘリウムガス入りスプレー缶の吸引による意識障害(日本小児科学会)

 こちらからダウンロード出来る傷害速報の全文PDFを読むと、もっと恐い話が載っています。

参照:No.53 ヘリウムガス入りスプレー缶の吸引による意識障害(PDF)(日本小児科学会)

引用、ここから。
(前略) 
【こどもの生活環境改善委員会からのコメント】 
(中略) 
4.潜水士(ダイバー)が深いところから浅いところに向かって上昇するとき,肺の中のガスは膨張するが,このときガスを吐き出さずに溜め込めば肺胞が破裂する5).本事例ではヘリウムガス入りスプレー缶から噴出されたヘリウムガスの吸引により,それ以上肺が膨張できない状態まで拡張したところに,噴出され続けるガスによって圧がかかり,その結果,肺胞が破裂した Barotrauma(圧損傷)が主病態であったと推測される.
本事例の女児の肺活量は年齢,身長,体重からおよそ 2.6L と推定される6)が,事故発生時の状況から完全に息を吐き切った状態からガスを吸引したわけではないようである.よって吸引の開始から肺容量が最大に達するまでに 2.6L のガス量は不要であったと考えられ,ガスの吸引中に肺容量が最大に達していたものと推定される.今回使用されたヘリウムガス入りスプレー缶のガス容量は 5,000cc であり,仮に最大呼出状態からの吸引であったとしても肺容量は最大に達しうる.鼻をつまみ,ノズルの先端をしっかりくわえたために,ガス圧の逃げ場がなかったこともおそらくは病態に関与していると思われる.
Barotrauma では細気管支や肺血管と隣接する肺胞が破綻する7).漏れ出たガスは肺門部に向かって伸展し縦隔気腫を形成する.さらに伸展すれば頸部・胸部の皮下気腫を認めるようになる.臓側胸膜が破綻し胸腔にガスが漏れた場合には気胸を形成する.
圧が高い場合には,肺胞と同時に破綻した肺血管にガスが流入する可能性がある.肺静脈系にガスが流入した場合には左心から大動脈を介して空気塞栓症を引き起こす.肺動脈系にガスが流入した場合であっても,卵円孔開存や生理的な肺動静脈シャントなどを介して左心系に達し空気塞栓症を引き起こす.また,卵円孔開存やシャントがなくても肺血管床による空気のろ過域値を越える量のガスが流入すれば空気塞栓症を発症しうる(イヌにおける実験では 0.3mL/kg/min がろ過域値)2)8)9). 
(後略)
出典:日本小児科学会 
引用、ここまで。

 被害者の肺の容量は2.6リットル程度と思われるところに、5リットルのヘリウムガスを吸い込ませた、いや押し込んだので、肺胞が破裂したということですね。
 その原因として、テレビ受けを良くしようと口にしっかりと缶をくわえ、鼻をつまんで吸い込んだことで、ヘリウムの圧力が鼻などから抜けていくことが出来なかったためであると(ほぼ断定的に)推測しています。
 漫画やアニメであるような、空気入れで人間を膨らませるようなシーンを子供が真似をして、しっかりとホース等を咥え、鼻をしっかり押さえていたら同様のことが起こった可能性があるわけですね。
 ヘリウムと言う気体が問題ではなく、“肺活量を大きく超える容量の圧力容器を口に咥え鼻を押さえて気体を押し込む”ようにしたことが問題であったこと、十分注意したいと思います。
 というか、お子さんをお持ちの方に広く知って貰いたい事ですね。
 良かったら、あなたの回りの方にも教えてあげてください。

 それでは、今回はこのへんで。

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