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2014年1月27日月曜日

デイトレード結果の分析

 こんにちは、稲田商会です。

 株のデイトレードデータを分析したので簡単に紹介します。
 といっても、分析の手法と結果を主に説明し、分析対象としたデータは示しません。

○分析の方針
 デイトレードのデータを分析するのは、デイトレードでプラスとするためです。
 プラスにならない理由として可能性が高いのは“損切りがきちんと出来ない”ことです。
 損切りが大事と言われますが、どの位で損切りするべきかの目安が無いと、なかなか踏ん切りが出来ず、そのままずるずると行ってしまいます。
 分析することで、損切りの目安がある程度は掴めると考えます。
 分析の方針は次の通りです。
  • 銘柄は考えず、売買の金額、数量だけで考える。
  • 損切りの目安を明らかにしたい。
  • 出来ればトレードの目安も明らかにしたい。

○分析対象の情報

  • トレードは買い建てのみとする
  • デイトレードによる売買情報で、買い建てた単価、返済した単価、株数の情報

 変数は次の通りとします。
買建単価: Xb
返済単価: Xs
株数  : Yv

○分析の準備作業

 まずは、分析に当たって売買情報の規準化を行います。
 規準化の理由は、例えば株価が

A 10,000円→10,150円(100円アップ、1%アップ)

B 500円→600円(100円アップ、20%アップ)

C 500円→505円(5円アップ、1%アップ)

の情報があった場合、どの情報を“同じ程度の重み”として扱うのかによって、分析結果が大きく異なるからです。

 今回は、「株価の上昇、下降した割合に意味がある」と考えるようにします。
 上の例では、AとCが同じ「1%アップ」なので「同じ程度の重み」と取り扱うことにします。
 これから、分析に当たって、次の変数を定義します。

売買差額(=返済単価-買建単価): Xd = Xs - Xb
売買差額率(=売買差額/買建単価): Xdp = Xd / Xb

 また、株価の価格帯により何か差があるかもしれないので、価格帯による分類をします。
 価格帯は、桁が異なる程の差なので、指数的な範囲の区切りとします。
 例えば、1から10は底10の対数では0から1となるので、4等分すると対数で

10^0、10^0.25、10^0.5、10^0.75、10^1

が範囲の区切りとなり、数値では

1、1.778、3.162、5.623、10

となるので、丸めて

1、2、3、6、10

を範囲の区切りとします。

価格帯Gr: 買建単価が1~50 グループA
          51~100 グループB
          101~200 グループC
          201~300 グループD
          301~600 グループE
          601~1,000 グループF
          1,001~2,000 グループG
          2,001~3,000 グループH
          3,001~6,000 グループI
          6,001~10,000 グループJ
          10,001~20,000 グループK

 入手したデータの範囲は単価20,000円以下だったので、ここまでとします。

 株数Yvは売買単位が100株、1,000株と異なるので 規準化すべきと思います。
 規準化として、“同じ程度の懐の痛さ”を考えて、売買の結果得られる売買損益Ymを考えます。

売買損益(=売買差額×株数): Ym = Xd * Yv

○分析作業と結果

 次の情報をExcelに入れて、Pivotテーブルで分析を行います。

Excel入力情報:
 整理番号NO、買建単価Xb、返済単価Xs、株数Yv、売買差額Xd、売買差額率Xdp、価格帯Gr、売買損益Ym

手順1
 まず、Pivotで集計対象を整理番号NOのデータの個数として、行ラベルに売買差額率Xdpを入れてみます。
 そのままでは見にくいので、行ラベルを適当にグループ化してみます。

(上図はPivotテーブルの内容を調整した上でグラフ化しています)

 与えたデータでは、プラスが出た場合はほとんどが売買差額率が0.005(0.5%)までの範囲にあり、0.01(1%)以上となるのはほんの僅かでした。
 一方、マイナスがでた場合は緩やかな塊が売買差額率が-0.0075(-0.75%)まで広がり、より低い位置まで続いていました。
 これは「勝つときは小幅に、負けるときは大幅に」なっていることを示しており、「損切り出来ない」ことを如実に表しています。

手順2
 次に、価格帯毎の分布はどうなるかを見るために、列ラベルに価格帯Grを入れてみます。

(上図はPivotテーブルの内容を調整した上で手作業で着色しています)

 与えたデータでは、価格帯毎でプラスが出るか、マイナスかの傾向が異なり、グループE(301~600円)からグループI(3,001~6,000円)の範囲ではややプラスが多いようですが、グループD(201~300円)以下やグループJ(6,001~10,000円)以上の価格帯ではマイナスの回数が多いようです。
 これから、プラスの出やすい価格帯、出にくい価格帯があることが判ります。

手順3
 次に、金額が適切なのか見てみましょう。
 大きな金額の時に大きく負けている可能性があるかもしれません。
 行ラベルに売買損益に入れ替えて、行ラベルをグループ化します。
 また列ラベルに売買差額率を入れてみます。

(上図はPivotテーブルの内容を調整した上で手作業で着色しています)

 与えたデータでは、プラスが出た場合よりもマイナスが出た場合の売買損益の絶対値が大きく、またばらついているように思われます。
 これから、「負けるときは大きな金額を張っている場合が多い」可能性があります。
 よって、一回のトレード当たりに金額的な目安を設けておいた方が良いと言えます。

手順4
 では、損切り範囲および取引金額上限を設定すると本当に儲けられるようになるのでしょうか。
 先ほどのデータを使って計算してみましょう。
 まず、損切り(益出し)を行う範囲、一回当たりの取引金額について条件を決めた取引条件表を作成します。 
 表の形は次のようになります。

価格帯Gr、取引上限株数、益出し幅(益出し幅率、益出し金額)、損切り幅(損切り幅率、損切り金額)、売買上限金額


 益出し幅、損切り幅を、各価格帯で株価の上限値(グループC(101~200円)では200円)に対してそれぞれ1%程度、0.5%程度となるようにしました。
 また、益出し幅、損切り幅に取引上限株数を掛けた益出し金額、損切り金額がある程度の金額となるようにしました。
 売買上限金額は、価格帯上限値×取引上限株数で算出したものです。
 作成する際に、株価が300以下となる価格帯GrのグループA~Dでは株価上限値に率を掛けるだけの益出し幅、損益幅が取引時に現実的ではなく、やや高い値としました。

 取引条件表が出来たなら、それを元にExcelに項目を追加します。
 追加する項目は、次の項目になります。

差額制限フラグ: 売買差額Xdが益出し幅、損切り幅に収まるかどうかの判定
株数制限フラグ: 株数Yvが取引上限株数に収まるかどうかの判定
制限後差額Xdlimit: 売買差額を益出し幅、損切り幅の範囲に制限したもの
制限後株数Yvlimit: 株数を取引上限株数の範囲に制限したもの

 また、制限による取引結果として、
  ケース1 差額のみ制限
  ケース2 株数のみ制限
  ケース3 差額株数制限
の3ケースについて売買した損益を計算します。

ケース1(差額のみ制限)損益Ymcase1: 制限後差額Xdlimit×株数Yv
ケース2(株数のみ制限)損益Ymcase2: 売買差額Xd×制限後株数Yvlimit
ケース3(差額株数制限)損益Ymcase3: 制限後差額Xdlimit×制限後株数Yvlimit

 Pivotテーブルで、集計対象に次の項目を加え、計算方法を合計にします。

売買差益Ym、ケース1(差額のみ制限)損益Ymcase1、ケース2(株数のみ制限)損益Ymcase2、ケース3(差額株数制限)損益Ymcase3

 行ラベルは売買差額率Xdpや価格帯Grでして表を作成してみて下さい。

(上図はPivotテーブルの内容を調整した上でグラフ化しています)

 与えたデータでは、差額制限のあるケース1とケース3でプラスとなり、株数制限のみのケース2はマイナスが半分程度になったもののプラスにはなりませんでした。
 合計値では、次の順番となりました。

ケース1>ケース3>0>ケース2>売買損益

 より詳細に見てみると、差額制限はプラス側に変化は無く、マイナス側が少なくなっていました。
 一方、株数制限では、マイナス側も少なくなるものの差額制限の効果に劣っているのに加え、プラス側も少なくなっていました。
 これから、トータルでプラスにするには、差額制限は有効で、株数制限はあまり有効ではないことになります。

○分析結果のまとめ

 デイトレードデータを分析したところ、次の事が判りました。
  • 売買差額率でみて、トレードでプラスが出た場合は売買差額率の絶対値が0.5%以内が多く、マイナスが出た場合はそれよりも絶対値が大きくなる傾向があり、損切りが出来ていない傾向にあります。
  • 売買損益でみて、トレードでプラスが出た場合は売買損益の絶対値の範囲に比べ、マイナスが出た場合はより広い範囲に分布しており、損切りをしなければならない場合の株数が多い可能性が考えられます(売買差額率の傾向のみによる可能性もあります)。
  • 価格帯により売買での成績が異なり、プラスの出やすい価格帯、出にくい価格帯があります。
  • 差額制限を行うことによって損切りがきちんと出来たなら、トータルでプラスになると推測されます。
  • 株数制限を行ってもあまり影響が無いことから取引上限株数については参考程度でよいとと考えられます。
  • 取引条件表により、一回当たりの売買損益の幅が明確になるため、今後はより計画的に売買出来るものと考えられます。

○最後に

 以上、デイトレードデータを分析し、いくつかの知見が得られました。
 久し振りにデータの分析をすると、とても楽しいですね。

 それでは、今回はこの辺で。